魔族

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普通は、相手を倒したあと嫌味の一つでも言ってやるのだが、 何故かアスロンはあっけにとられていた。 「わざと…剣の力を緩めた……?」 (結界を破って、こっちに入ってこれる程の上級魔族が、何故この位でやられるの? 確かに、恐ろしいほどに魔力を持っていたわ。私を軽く滅ぼせるくらいの魔力を。まさか…わざと負けた?) アスロンは、不思議に思った。 しかし、いくらアスロンの力が強くても、神々が人間界に張った結界はかなり強力であり、そんじょそこらにいる低俗魔族には破って入る事が出来ない。破るどころか、触れただけでその力によって滅びてしまうのだから。 だが、あの魔族は結界を破る程の力を持っていて、なおかつ魔王直々の命令を下される程の位の高い魔族。 その魔族が、「ダークソード」位で負けるはずがない。 (何かが起こるわね…。何かが。) 自ら滅ぼした魔族が立っていた地を見つめ、アスロンはそう思った。 そして、立ち尽くすアスロンを見つめる影があった。 結界の外から見ている為、アスロンは気づかない。 「聖魔道士アスロンか…。俺の”影”を滅ぼすなんて、結構やるな。しかも、魔王様の力を使った剣…ダークソードまで使えるとは。 くくく…。ますます魅力的だ。そう思いませんか?魔王様。」 口に不気味な笑みを浮かべ、魔王にそう呟いた白金の瞳は闇へと消えていった。
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