燕(つばくらめ)墜つ

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空舞うつばくらめをつらまえた それはやけに大人しかった 見ればそれは怪我をしていた 私はそれの喉元に、そっと親指を添えた (It is too early…) 親指を少し押した ばさばさとそれのもがく音 私へのささやかな痛み いまわの際の全力の足掻き 尽きる間際の線香花火の輝きに似て、それはとても美しく ──私は少し、力をこめた ごりりという骨の軋む音 一層強くなる羽音 やがて こきりという音とともに首は折れ、足掻きは止み、それは墜ちた羽根となりて……散った それの時は止まり、私の手に一抹の不快感を遺し、私は未だ痙攣するそれを棄てた 墜ちたつばくらめと、鮮やかなる黒き死の残響── (…to lost his life.)
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