渡殿を歩く姫君

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一命は取り止めたけど傷がまだ痛む だが頼朝さんの命令で熊野へ来た、望美も熊野に何度も来たと神子の頃の色々な話をしてくれる 「後ね、ヒノエ君が別当で弁慶さんと敦盛さんが産まれた場所なの!暖かくて優しい場所だよ」 「本当?じゃあ回ろうかな」 望美は笑みを浮かばせると何回も頷いて“一緒に行くよ”と言ってくれた   だけど夜に聞いた話で緋直は熊野を救いたいと願う “…熊野の海賊が” “嫁を…拐う?” 「女の子が…私が囮になるから、熊野を助けたいんです」 ヒノエはニヤリと笑うと“構わないよ”と告げて十二単を相手に投げた 翌日、望美は心配そうに十二単を着せると朔は緋直に化粧を施す 髪は後ろを結んで 「緋直、綺麗よ?」 「私にもこんなのあったよね!」 “そうね”と朔は笑うと緋直は立ち上がりふ、と笑って そしてゆっくりと噂の渡殿へと向かった 「……」 草影から敦盛とヒノエは緋直を見るヒノエは“ふぅん…似合うね、でも心が真っ暗なせいか綺麗には見えない”と言えば敦盛は若干不機嫌な表情を滲ませて 「…私は、神子は美し…いと思う」 「はあ?魅春を小刀で斬りつける奴だぜ?なんでそこまでアイツに執着するんだよ」 「神子は、そんな事をする人ではないからだ」 「人間見掛けによらないからね、特に女はさ」 「それなら魅春殿だってそうだろう」 「…………チッ」 一本取られた、そんな表情をヒノエが滲ませた瞬間 緋直が海賊に絡まれていた 「離し…て!ゴホッ…!」 「お嬢ちゃん、どっか怪我してるな?庇ってるもんなぁ…」 ビクリと体を揺らせば傷口の辺りを叩かれると 一度咳き込んで体の力が抜けていくのが分かって “ああ…終わるのかな”なんて思っていた瞬間海賊は緋直の体を離して敦盛が緋直を抱き締めていた 海賊の体は離してではなく、飛んだの方が正しいかもしれない 「神子、大丈夫だろうか」 「え…あ…はい…」 髪を結んでいた紐がほどけていくと、赤い長い髪はあるべき場所に戻る ヒノエは若干ながらもその緋直に魅せられていた ふ、と瞳をヒノエと合わすとヒノエは反らし宿屋への帰路を辿って 少し遅れて敦盛と緋直も宿屋へ帰って行った 続く
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