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セイはフラットまで車で送ってくれた。
全身真っ黒なセイは、車さえ黒くて。
喪服代わりの黒いワンピースを着ていた私も含めて、夜のフラットの前に在るのは全部、黒だった。
「ありがとう、セイ。ハンカチは洗って返すから…」
「一人で大丈夫か」
「平気。本当にありがとうね、セイ…」
車から降りて、運転席のセイを覗き込みながらお礼を言う。
セイはハンドルに片腕を載せたまま、暫く私をじっと見上げていた。
やがて何を思ったか、車を降りる。
「セイ…?」
どうしたの、と訊く前に、持っていた手荷物をさっと取られる。
「部屋まで送る」
言うが早いか、セイはフラットに向かって歩き出した。
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