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杖をついて歩くジェラルドおじいちゃんを支えながら、私は溜息を吐いた。
あの後、ティムは何を訊いても答えてくれなかった。
セイはセイで、さっさと帰っちゃったし…。
「また、ブラッキーかね」
隣で、ジェラルドおじいちゃんが訊いた。
私は苦笑した。
ブラッキーとは、セイのことだ。いつも黒い服を着ているから、とジェラルドおじいちゃんが勝手に命名してしまった。
「今日は誰が死んだんだね?」
不意に、おじいちゃんはそんなことを言った。
「何言ってるの、おじいちゃん。誰も死んじゃってなんかいないよ」
「ブラッキーが来る時は、必ず誰か死ぬ。今日は誰が死んだ? マーティか、レイモンドか…」
おじいちゃんは、ぶつぶつと独り言を言い始めた。
今まで痴呆が進んでしまった人達と関わったことは、何度もあった。
でも…その時のおじいちゃんは、何だか不気味で怖かった。
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