Bloody One

8/8
前へ
/28ページ
次へ
   杖をついて歩くジェラルドおじいちゃんを支えながら、私は溜息を吐いた。  あの後、ティムは何を訊いても答えてくれなかった。  セイはセイで、さっさと帰っちゃったし…。 「また、ブラッキーかね」  隣で、ジェラルドおじいちゃんが訊いた。  私は苦笑した。  ブラッキーとは、セイのことだ。いつも黒い服を着ているから、とジェラルドおじいちゃんが勝手に命名してしまった。 「今日は誰が死んだんだね?」  不意に、おじいちゃんはそんなことを言った。 「何言ってるの、おじいちゃん。誰も死んじゃってなんかいないよ」 「ブラッキーが来る時は、必ず誰か死ぬ。今日は誰が死んだ? マーティか、レイモンドか…」  おじいちゃんは、ぶつぶつと独り言を言い始めた。  今まで痴呆が進んでしまった人達と関わったことは、何度もあった。  でも…その時のおじいちゃんは、何だか不気味で怖かった。  
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加