迷宮街

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 夜は、良い。  空気は気持澄んだ気がするし、何より静かだ。  だが、やはり月の綺麗な夜だ。最高に良い。満月なら言うことが無い。  こんな夜は無意味に跳び跳ねたくなる。  風を切って走りたくなる。  だから、今そうしている。  遥か眼下に崩れかけたアスファルトを眺め、時に壁面に掴まり、時に張り付く。  ビルの屋上を疾走し、ビルの谷間を越えていく。  『あーあー。こちら怪人Sゥ怪人Sゥ。聞こえるかい?』  耳元で声が聞こえる。いや響く。骨伝導式のスピーカーからだ。  これなら、どんな乱戦の中からでも聞き逃す事がない。
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