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彼は昔から泣くことが極端に少なかった。
映画や卒業式など世間一般で泣くようなことも笑ってしまい、もの心ついてから泣いたのは、ある本を読んだ時だけだった。
そんな彼が、今は涙を流している。
うまく涙の流し方を知らなかった彼は、ハナの命と引き換えに泣き方を教わった。
そして、ハナと一緒に過ごした時間分だけの辛さを。
彼は泣きながら、何度も目を拭いながら穴を掘った。
「ハナ、ここなら暖かいかんな…ゆっくり眠れな…」
ハナが大好きだったタオルと一緒に土に埋めた。
田辺 ハナ
そして、彼と同じ名字を持つ猫は、暖かい土の中で眠った。
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