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ナルキッソスは双子の妹を亡くした
世界でいちばん大切だった妹
ナルキッソスはとても淋しく
悲しい日々を何日か送った
自分も死んでしまいたいと思うことがあった
一日を放心して過ごすこともあった
ある日のことであった
とある湖のほとり
地べたに座り水の中を見つめていると
妹の顔とよく似た顔が
ナルキッソスに呼びかけていた
ナルキッソスは不思議に思い
身を乗り出した
妹の顔とよく似た顔が
ナルキッソスを見つめていた
彼女は何を語りかけてくるわけでもないが
ナルキッソスは不思議に思い
その顔に見入った
鏡と云ったら、
ぼんやりとした顔が映るものしかなかった時代
妹の顔を見るために
ナルキッソスは何日も湖に通った
水のニンフをひとしお見つめ
妹のために泣くのであった
水のほとりで頭を垂れて
じっと自分の顔を見つめるナルキッソス
とうとう見かねた神様たちは
彼の姿を美しい花に変えてしまった
それ以来ナルキッソスは
池や小川のほとりで生まれるときは
今でもずっと自分の顔を見つめている
ナルキッソスは双子の妹を亡くした
世界でいちばん大切だった妹
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