雨宮さん

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頭がボーっとして、脇にイヤな汗を書いていたのを覚えている。 池袋の小料理居酒屋で署長に話を聞く。 簡単に言うと、以下のような感じ。 警察にも所轄毎に、いわゆる「成績表」がある。 検挙率、とかそういうふうに考えてもらえばいい。 で、警察とはご存知地域密着型のサービスゆえ、様々な側面で「地域格差」が出るのは否めない。 例えば、所轄により、どう頑張っても「科学捜査では解明できない」事件が多発するエリアがあるらしい。 そういったエリアでは、当然事件解明に至る確率は低下する。 そのような地域による評価の較差をうめるべく、70年代あたりから特定の条件を満たす特殊な事件に関して、その評価の対象から暗黙のうちに除外される、というルールができていたらしい。 それが、雨宮さんファイルに綴じられているような事件である、と。 「で、雨宮さんて、誰なんですか?あのファイルの名前…」 自分がそう聞くと、署長は胸のボールペンを取り出し、和紙の敷物に一文字、「霊」。 「な、上のとこ。雨、だろう。」 ニヤニヤする署長さん。 また後日、俺はそのファイルの事が気になり、署長に再度見せてくれと頼んだところ、 「気にするんじゃない。忘れておきなさい。」 と、ピシャリと一喝されてそれ以来。 その後、その署長といろいろゴタゴタがあって、警察もやめてしまい、今はお気楽サラリーマンやってます。
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