ろうそく

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母方の祖母が亡くなったときの話。 お葬式などを終えて親戚みんなが祖母の住んでいた家に集まった。 母をはじめ伯母たちが台所で夕食の準備を始めたので、まだ幼かった私も手伝いに行った。 台所では母たちが忙しなく動いていて、私は何をしていいかわからずに立ち尽くしていた。 ふと見ると、食器棚のガラスに無数のろうそくが映っている。 仏壇は別の部屋にあるし、台所にそんなにたくさんのろうそくがある訳がないのに。 不思議に思った私はそれに触ろうとした。 するとガラスの向こうのろうそくを触ることはできないが、風をおくると火がゆらめいた。 空気は通すらしい。 わたしは好奇心から、ふっ、と息を吹きかけてみた。 1本の火が消えた。 火が消えると同時に映っていたたくさんのろうそくも消え、元通り台所の様子が映った。 後で、あの世には人の寿命の長さを決めるろうそくがあるという話を聞いた。 私のせいで誰かが死んでいたらどうしよう…シャレにならない。
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