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あれは飛び込み自殺を間近に見たり、恐怖にこわばった女性の顔を見たから違和感があったのではない、
「その前からおかしかった」のだ!
「思い出せ…」
俺は今朝の光景を脳裏に描き始めた。
駅のホームは東西にのびている、つまり、朝日は上りホームを利用する俺の左手側から右手側に向かって差し込む。
ホームの屋根を支える柱も、駅の売店も、何もかもが左から右に向かって影を作るはずだ。
しかしあの女性の場合は違った。
あの女性が形作っていた影は足下から下、つまりこちら側にのびていた。
どう考えても自然ではない。
あの女性は何か得体の知れないものに引きずり込まれたんじゃないのか?
例えようもない気持ち悪さが胸から喉へとこみ上げてくる。
深夜遅く家に帰り、俺はネットで自分を納得させる理由を探して回った。
そしてついに見つけた。
8年前この駅で人身事故が起こった時のホームの写真だ。
事故の発生時刻は今朝のものとだいたい同じだ。
そして俺はホームを凝視し恐怖した。
黒い腕の様な影が線路からホームへと無数に伸び、事故にあった人の足下に絡みついているのを…
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