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「降り損ねたのかい?」
いつの間にいたのか、隣りにいるお婆さんから尋ねられた。
「そうなんです。今どこらへんか分かりますか?」
「※※※だよ。」
丁度良いところだけ聞こえなかった。
「お葬式の帰りかい?」
聞き返そうとしたら、逆にこっちが聞かれてししまった。
「はい、友人の…」
そこまで言ってて、何かが喉に張り付いてそれ以上言葉に出来なかった。
この日は確かに黒いスーツだったが、果たしてそれだけで分かるものなのだろうか。
沈黙に絶えきれず四角い景色に目を向けると、ブランコと滑り台だけの簡単な公園がが写し出されていた。
「あ、ここ…」
暗闇の中で、、そこだけぽつんと明るく見えた。
「ここ、よく友人と遊びに来てました。」
滑り台の剥がれたペンキとか、
公園の隅の秘密基地とか、
全てのものの面影に友人の姿が見える。
降りれるものなら降りたかった。
でもそうすることを私が私を許さなかった。
私が降りる場所はもうここではないのだから。
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