0人が本棚に入れています
本棚に追加
「川が綺麗ね。」
お婆さんが言った。
見ると、毎年花火大会で盛り上がる川辺が見えた。
水面が何やらオレンジや赤をたくさん乗せて、キラキラ輝いている。
私には分かる。
あれは友人と見た花火だ。
何を意地はってたんだろう。今まで、ずっと、今も。
バスが止まり、ドアが開いた。
そこへ誰かが乗り込む。
やせっぽちで、髪を肩まで伸ばした少女。そう、あのときの彼女。
「どうして…」
私は思わず立ち上がる。
「どうして、ここに?」
「‥久しぶりだね。」
彼女は私と彼女の間の時間を優しく埋めるように微笑んだ。
私の中の彼女はもう大分前から死んでいた。
でも、今、こんなに微笑んでいる。
「でも本当にどうしてここに…」
もう一度呟いてみせた。
するとお婆さんが独り言のように、
「そういえば今日バスの事故があったみたいだね。酷い事故だったそうだけど…。」
心に何かひっかかりを覚え、ちらりと腕時計に目をやった。
7時20分…。
最初のコメントを投稿しよう!