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「何故男物の制服…いや、男、なんだ?」
口にするとなんとも間の抜けた質問だ。しかしこれ以外に言い様がないし動揺していた。
普段のセーラーじゃない、鮮やかなブレザーは目に焼き付いたままだ。
そもそも骨格が違う。目線が違う。だが…声から考えれば自然な、其れ。
何故、という単語だけで覆い尽くされた頭の中を、長門は其の硬質な声で無慈悲にも貫いていく。
「僕は、元々男」
「僕…?!」
だったら今まで俺が見てきた長門は。ゆきの方は?
というか僕って。ああそうか男だというのなら一人称も違うわけか。よくできた夢だな、おい。
この際夢なのに痛覚があるというのには目を瞑る。だからさっさと覚めやがれ…!
「俺の知っている長門はセーラーのよく似合う女だったんだが?」
「………」
返ってきた沈黙に乗じて、俺は冗談みたいな其の姿をしっかりと見つめようと三度目を開く。今度はさすがにえらい慎重だ。
自称長門は見分けのつくようになった表情筋(性別が違っていても有効らしい)を微かに困ったような戸惑ったような、そんな風に引き締めて俺を見ていた。
…元の造作は変わらないようで微妙な違和感がある。
返事を待って暫く、漸くその口唇が動いた。
「そのような情報は存在しない。有機生命体の性別という概念からすれば、女というのは涼宮ハルヒや貴方のような人物を指すのだと思う」
…面妖な台詞を聞いた。
そして俺は、長門の声だけじゃなく自分の声も変に聞こえた理由をもう少し考えるべきだった。
何気なく向けられた指に合わせるように視線を下に向けると、其処には予期せぬモノが存在した。
男になくて女にある――ええい、間怠っこしい!
立派な胸が、俺の身体にくっついていたのだ。
馬鹿みたいに目を開いた痛みと自分の身体へのショックに言葉にならない奇声をあげた俺を非難できる野郎がいたら、是非会ってみたいもんだね。ぶん殴ってやる。
2008.3.20改
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