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「びっくりしたわよ。いきなり大声が聞こえたもんだから、何かの拍子で有希があんたを押し倒したかと思ったじゃない」
俺の奇声に扉をぶち破らんばかりに乱入してきたハルヒを筆頭に、後から朝比奈さんと古泉も入ってくる。
冷静になる前に現れたハルヒのおかげで長門を問い詰める事もできなくなり、俺は何か気恥ずかしい身体を布団で隠す。上体を起こして首下からかけている状
態だ。
幸いというのかどうなのか、俺と長門以外の性別は元のままなのが救いだった。
そんな事はしない、と幾分憮然としたような長門に軽く笑って、ハルヒは頷いた。
「冗談よ。有希(ゆうき、である。念の為)がそんな事する筈ないもの」
「そう」
「しっかし、凄かったのよ有希ったら!キョンってば覚えてないでしょ。あんたが気を失ってるのを有希が軽々抱えて此処まで連れてきたんだから!」
しかもお姫様抱っこよお姫様抱っこ!まさかこの目で見る事になるとは思わなかったわ!
怒濤のようにそう続いたハルヒの言を、しかし俺は素面で聞ける気がしなかった。
……俺に明日からどうやって顔を上げて歩けというんだ。まさかこの年になって、しかも男が(其処は譲れない)お姫様抱っこ、って…恨むぞ、長門。頼むから
もう少しやり方を考えてくれ。
「そして貴方を心配する我々や貴方のクラスメイト、あとはお姫様抱っこという噂を聞き付けてやってきた人物達が鈴なりに此処に集まってしまったため、先生
に長門さん以外は追い出されてしまったのですよ」
爽やかに笑んだままの古泉がさらりと口にする。
相も変わらず解説役をどうも。先生に心の底から感謝したい。
「僕としては貴方を此処まで連れてくる役目を負いたかったのですが…授業が合同でなくて残念です」
未だ長門でよかったと思えてくるのは何故だろう。不思議だ。
2008.3.20改
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