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鬼蓄金髪少年の周りにも空(略)少年と同じく、私物が至る所に広がっていた。
彼は室内でやる競技・剣道をしているらしい。回りには防具や竹刀・練習技等々がおかれ、臭い消しを行っているようだ。それらの物の横にはあのCMで有名な臭い消しのスプレーが置いてある。かなりの量を使うのか、詰め替えようも常備である。
そろそろイライラがピークだな、そう感じていた。
「あれ? 空は?」
不意に発せられた言葉を聞き、誰かをすぐに聞き分けた彼は思わず顔をニヤリと崩させた。
S気、発動だ。
「ぉ、なんや。戻ったんかいな、雷。空は部屋掃除や」
「え、なんで? 空の部屋別に汚く無いし整理整頓されてるじゃん」
雷と呼ばれる少年が、1-Aの教室に入ってきた。彼も高校一年生であるらしく、別に二人から世話されるような年齢でもない。
少し癖っけの短めの赤髪に、黒い肌。目は少々つり目で黒い肌の左頬には大きな傷があった。昔つけてしまったのだろう。手にサッカーボールを持っている事からして、サッカー部なのだろう。青いエナメルを持ってドアの前にたたずんでいる。
「あれやん、噂の編入生が今日くるんやって。知り合いの子供と言えども最善の状態で向かえるのが礼儀やろうってさ」
「それでも……」
まだ不服そうな雷と呼ばれる少年。金髪少年がクスクス笑いながら、言った。
「ヤキモチか、雷」
「なっ! ちげぇよっ! 早く用意しろよっ! 寮帰んぞっ!」
「黒いお肌が真っ赤っかやでー!」
「うっせぇなっ! てめぇなんか一人で帰りやがれっ!!」
「あんれぇ、そんなこと言ってもよかったんかなぁ? 俺が居らんかったら同室の君は俺が帰るまで部屋に入られへんやん♪ 俺が1つしかない鍵を持ってるんやし?」
「っ! この悪魔っ!」
「何とでもいいなさいやー。誰が今まで好きで雷の事待ってたと思ってるんかなー、暑い中、汗流しながらやのに……」
「それとこれとは別――」
完全に冷静さを失った雷(略)少年には勝ち目などなく、鬼蓄金髪少年が相手を丸め込んでいく。これが、空(略)少年らがいう世話なのだろう。
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