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「……あれ。校門に誰かおるな」
「あぁ? ……ありゃ女じゃね?」
「けど大荷物やし、なんか、今一時に近いけど? 空の言うてた転校生かもしれん」
「人違いだろ」
まったくもって、赤髪雷少年にとってそれは興味の無いものだったらしい。鬼蓄金髪少年とは違い、興味無さげに校門を見ている。
一方、校門では何やら必死に願う“あの子”がいる。今日はここで、ある人が一時に迎えに来てくれるらしいのだが、どうか金髪や赤髪じゃないように願っていたのだ。赤髪や、金髪は、どうしても田舎育ちの“あの子”の目にはヤンキーさんにしか見えなかったのだ。迎えに来てくれる人は会った事がなかったが、名前のみしっていた。
ぎゅっと握った手には、ここ“青種学園”と、“城島 空”と言う人名が書かれてある紙があった。
「うー、空さんじゃないようにっ!!」
「空やて、雷」
「まぁ、空って言ったな。どうみたって、女だしな……俺は信じられねぇんだけど、空に彼女出来たとか」
「え、やっぱりホモなん、雷っ! 俺やっぱり今日からは一人部屋に移してもらおかな……」
「ちげぇよっ! あいつが女を好きになるか?」
「あーうん、確かに。じゃぁ君は空の……なんや?」
いきなり、自分の目の前に現れるや否や、勝手に自分を挟んで話を始めた二人。思わず身をすくめた那智だが、勝手に空さんとやらの、彼女になって、あげくの果てには、金髪のヤンキーの兄ちゃんにじぃっと穴が開くほど見られ、余計目の前にいる二人が変人だと思った。どうしたらよいのか分からず、“あの子”はあたふたしながら答えた。
「僕、女の子じゃないんですけど……。あと、城島 空さんってしりませんか? 今日、ここで一時に待ち合わせ、するはずだったんですけど……」
「……ぇ……」
「って事はやなぁっ……」
二人が“あの子”から、自分が化け物のような目をしてあとずさった。もちろん頭を傾ける“あの子”。
本当に変人二人が並ばれると扱いのしようがない。
内心そう思いながら二人を見て、“あの子”は言う。
「僕が何だと言うんです?」
「「黒関 進の子供!!!!!」」
――今、なんつったこいつら――
それを聞いて、那智は一瞬固まった。だって、名前を教えたこともない二人が自分のトップシークレットの次に、ばれたくない秘密だったのだ。
そう、“あの子”にとってそれは迷惑極まりない発言であったのだ。
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