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その喫茶店は、調べてみればいとも容易く出てきた。場所も近い。
行ってみよう。
僕は興味本意で喫茶店“T・P・S”の扉を開く。
この時点で
僕の人生は大きく変わっていたのだと、今更、思う。
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あっ!!
お客さん!
初めまして、こちらへどうぞ?
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いきなりカウンターの椅子を勧められた。隅がよかったのに。なんというか、強引。
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君の名前は?
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取り合えず、自分の名前を呟いた。あまり好みではない、この名前を。
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へぇ、いい名前だっ!
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僕は好まない
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僕はね、しぃって言うんだ。間違えないで、僕は、猫だから! 呼び方は何でもいいよ。僕は、君のことを“お客さん”って呼ぶから。
これからよろしく!
って……あ、もしかして興味本意で来ちゃった? 何があるかもしらずに? ……お客さん、その内変な人に捕まらないようにね……。
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なんか、失礼だな……。こっちはただの喫茶店としか思ってないし、家に帰りたくないから来ただけだ。たかが暇つぶし程度である。
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ここは、そこらの喫茶店とはちょっと違うんだ!
招待の仕方も変でしょ?
一杯の珈琲とあるお話のセットだけがメニュー。
そのためだけの招待券だよ、あれは。
僕は入れてない。
あの手紙はランダムにいろんな場所に入れていく。
これも何かの縁、話を聞いていかない?
長いけれどきっとはまると思うんだ。どう?
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よく喋るな……
とりあえず頷いておこう。どうせ暇だから。
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よし、じゃぁ珈琲用意するね。
僕は今から話す物語の案内人。別に、これから先、面白くないと思うなら、途中で帰ってもいい。
ただ、これから、聞くお話を聞いて君に何か掴めたら
……それが、僕の役目だから。
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置かれた珈琲に口をつける。
長い
長い
物語が始まった。
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