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紀保が去った後も俺達の会話は弾んだ。
「なぁ春樹、紀保先生が隠れんぼをしてて、下校が時刻が過ぎても帰ら無かった俺達にした話覚えてるか?」
突然の裕矢の質問に俺は首を傾げる。
俺達はいつも遅くまで遊んでは紀保に見つかって説教されながら家まで送ってもらった。
そんな最中にされた話しは多くてどれをさして聞かれたのか解らずに黙って裕矢を見ていれば裕矢は何が可笑しいのか腹を押さえ笑い始めた。
「五時婆の話しだよ」
裕矢の言葉に俺は思わず苦笑いを漏らす。
忘れていた、小さい頃あんなに毎日の様に恐れていたのに。
「忘れてたよ…今思うと何であんなにビビってたんだろうな?」
「なぁ?」
なんて、未だ笑いの収まらない裕矢は目に涙を浮かべながら返してきた。
「5時になってうろうろしてると五時婆って、とっても怖いお化けがくるよ?」
ある日何時もの様に放課後を過ぎても帰っていなかった俺達に真剣な表情告げたんだっけ。
次の日から俺達は五時までにはもう、家についていた。
毎日、「五時婆がきちゃうよっ!」
何て言いながら家に走っていた。
宿題を忘れて居残りで5時になった時なんて泣きながら紀保に送ってもらったのを思い出し俺も思わず笑い出してしまった。
今思えばそんな嘘を信じる何て本当に小さい頃は単純だったなんて思える。
お化けの存在を本当に信じいた。
小学校の高学年になるころにはすっかり忘れていたっけ。
そんな、思い出話も混ぜながら俺達の話は遅くまで続いた。
外に出れば冷たい風が暖かさに慣れていた体につきささる。
「うぇ~さみいぃぃぃ!」
暖かかくなるはずもないのに叫ばずにはいられなかった。
しばらく歩き農道に通じる道の前で歩みを止める。
裕矢はとはここで何時も別れる。
ここらは田舎で街灯も無いに等しい。
人通りも少なく、だからだと思う、紀保の話に真に受けて日が暮れる前に帰っていたのは。
今でも正直少し怖い、勿論お化けじゃない、田舎にだって小さな事件の一つや二つはある。
最近も惨殺遺体が見つかった事件が報道されていたっけ…。
考えていれば変な不安に支配されていく。
「春樹!」
張り上げられた裕矢の声にドキリとする。
裕矢を見ればニヤニヤと笑う姿が視界に入る。
「さっきの話で怖くなった?」
馬鹿にしたように笑いながら裕矢は肩をすくめる。
「ちげぇよ!」
叫ぶのと同時に突風がふく、女の笑い声が微かに聞こえた気がした。
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