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夕方4時半、俺の横を歩く裕矢はうなだれていた。
理由は単純、楽しみにしていた今日の予定が狂ったから。
冬休みだというのに今日は特別にゲーセンに人が少なかったからだ。
数時間粘ってはみたが格ゲーの台に座ったのはわずか3人、それも3人目の男は何度挑んでも勝つことは出来なかった。
「あぁ…くやしぃ」
ぼやく裕矢を横目に俺は酒とつまみになるものをてきとうにかごにほりこむ。
レジに立つ男は顔馴染み、カウンターに籠を載せれば男は悪戯ぽく笑い口を開く。
「お、来たね不良少年」
髭をはやしてはいるが未だ若い大学生らしく、本人曰く俺達と同じ位の歳で友達とあつまって明け方まで酒とタバコで騒いだりしていたらしい。
要するに不良の先輩だ。
「チィースッ」
スッカリいつものテンションに戻った裕矢が俺の前に立つ。
「相変わらずだな」
店員の男は楽し気に笑う、髭をはやしていても笑った表情はどことなく幼く見えた。
「先輩だって不良じゃないっすか」
俺が笑い声混じりに返せば男はニヤニヤと笑うだけだった。
清算も済んで出口に向かう、「又来ますね先輩~」
「又なっ」短く切りのいい返事が耳に届いた。
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