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突然の行動に意味も解からず、取りあえず裕矢の落とした袋を取りに帰ろうと一度振り返る、同時に裕矢の叫びにもにた声が耳に響いた「振り返るなっ!」
が、遅かった俺は完全に振り返ってしまっていた。
同時に俺も袋を捨て引かれるのでは無く、自分から必死に走った。
『あり得ない』
その考えが頭の中で繰り返され続けた。
自分達以外の全ての色がほぼ統一されていた世界にあり得ない色が混ざっていた。
白と濃い灰色。
二人いた。
白いバサバサの長い髪をした下半身の無い老婆、死んだような白いシワシワの肌、生気を感じない濁ったウッすらと開かれた目、そして微かに吊り上げられた口元…ニタニタと口元のみが笑っていた。
手には老婆ににつくわしくない大きな鎌。
鈍くギラギラと光、後ろで老婆を抱え走る、怒った表情の老人、灰色の服を着込み見た目には普通の人間の様だった。
だが、確かにそれは異様な光景…。
「ジァギィィィ…ガァァ」
怒りを含んだ老人の訳の解らない叫び声。
その声は徐々に近づく。
老人とは思えない程のスピード。
『追い付かれたら殺される』
何故かそんな確信をもっていた。
そして、子供の頃なんとなく想像していたそれとは違ったが、それは恐らく…先生の嘘だと今では信じこんでいた、『五時婆』
何故かそう強く確信していた。
距離を確かめようと振り返ればニタニタと笑う老婆が目の前にまでせまっていた。
足がもつれる、あまりの異様さにまともに頭がはたらなかない。
呼吸が乱れ頭が呆然としはじめた…ヤバイ…ヤバイ…殺される!
「っぁ…」
裕矢の声に少しだけ意識が取り戻された…。
同時に絶望した…。
「あぁ…」
知りつくしていた道なのに一本の真っ直ぐな道をただひたすらに走るあまり、曲がるべき道を曲がる事を忘れていた。
目の前には川が流れ逃げる道を失った。
張られた策は高く逃げる道はもう絶たれた。
「イギゥィィ…」
声がすぐ後ろで響いた。
振り向けば鎌をかかげた表情の変わらない老婆…。
「アァ…」
風を切り振り下ろされる鎌…。
ダメだ…。
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