僕が生きた日

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  〈2〉 ひい、ふう、みい、よお………… 自分の呼吸と川の流れだけが聞こえる世界で、瞳を閉じた僕は心の中で数を数える。 いつ、むう、なな……… ガサガサと長草を掻き分ける音が聞こえてき、幸太郎はにやりと笑う。 誰か長草の中に隠れよおるな。 油断すんなよ。 最初に探す場所を決めた幸太郎は、残りを数えてしまおうと強く目をつぶる。 やあ、ここのつ……… 背中を太陽がじりじり焼いた。 しかし既に真っ黒な細い身体は、疲れを知らない。 ……とお!!!! 十まで数えてしまった幸太郎は、意気込んで勢いよく立ち上がった。 しかし振り向くとすぐ目の前にいた影に気付かず、そのまま激突してしまった。 「うおおぉおおっ!!?」 「うわっ!!」 いつの間に真後ろにいたのか。 幸太郎は驚いて思わず叫んでしまった。 ぶつかってしまった人物も叫び声をあげて、しりもちをついてしまっていた。 幸いこけはしなかった幸太郎は、驚きで跳ねる心臓を押さえる。 文句を言ってやろうと地面に座りこんでいる人物に目をやった。 袖のないシャツに、膝丈のズボン。 地面について砂で汚れているが、幸太郎たちの格好とは比べ物にならないくらい清潔感があった。  
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