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1948年8月
小学校最後の夏休み。
僕は君と出会った。
〈1〉
薄汚れたノースリーブの肌着一枚と、短パンで僕は座敷の畳の上に寝転がっていた。
土臭い畳の上は心地よく、土瓦の屋根が刺す様な日差しを遮ってくれる。
日陰の風がなでた、汗ばむ坊主頭をかきむしる。
衝動的に片手に持っていた鉛筆を放り投げた。
カツンと、畳の上で一躍した鉛筆の重たい音が耳に残った。
鉛筆なんか大嫌いだ。
いや、実際は鉛筆自体が嫌いな訳ではない。
僕は勉強が大嫌いなのだ。
その証拠に夏休み中、僕は朝から家を飛び出し、夕方まで帰らなかった。
一日中遊びほうけていた。
家に帰ってくるころには、頭から土砂を被ったみたいに泥だらけになっているのが日課になっていた。
どこの子も同じだった。
勉強という言葉を聞くだけで気分が下がるというか、身体の内面的なものが一気に拒否してしまう。
子どもの身体は正直だ。
外を駆けずりまわることで、僕たちは開放された。
それが、今朝はずっと家の中だ。
母親に捕まってしまった。
それは、母親が怖い顔をしているのも含めて、全ての理由は僕にある。
夏休み終わりが近いこの日、前で記した通り僕は勉強が嫌いなため宿題を全くやっていなかったのだ。
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