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『次の授業なんだっけ?』
そんなコトを考えながら空を見上げると、ゆっくり流れてゆく大きな雲に、目がとまった。
『なんだか、この雲…クジラの親子みたいな形だな。』
そう考えたとき、その親子を切り裂くような、一筋の飛行機雲が走った。
それを見て、私は一瞬何か考えそうになったけど、
キーンコーンカーン…
チャイムがなり、私の意識は、それから外れた。
空から、目線を教卓にもどした。
ガラッ…
「規律―。 礼―。」
挨拶をおえ、席に座り、再び目線を戻すと、アイツが立っていた。
『なんでコイツ?』
コイツとは、なんだか会うのが嫌だった。
言い捨てみたいに言っておいてきた言葉が、あとあと恥ずかしくなっていたからだ。
だって…あの時、本当は助かったと、心のどこかでは分かっていたから。
「ありがとう」って言えない、自分の子供の部分が、嫌だった。
「帰りのHRは、石井先生が急きょ出張のため、俺がします~。」
私のキモチとは裏腹に、教壇に立っているソイツは、ニコニコ笑っている。
「「《キャー》シバ先~~~」」
「「ラッキィー!!!」」
途端に、教室から黄色い声をあげる女子生徒達。
「「あっ!シバちゃんじゃん!!!」」
「「モテモテ、シバちゃん~~」」
楽しそうに、先生を見る男子生徒達。
ざわつく教室。
『もうHRか…。コレ終わったら…帰らなきゃ…か…』
周りの歓声を聞きながら、次が授業でなく、学校が終わりということを、私は残念に思った。
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