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紳士の訪問から二日後。
今、私(25歳無職/独身)は二日前に購入したばかりの二階建て庭付きマイホーム(1億円)で、牛革のソファ(100万円)に座りながら、悠々とフランス産高級ワイン(10万円)をバカラのグラス(1万円)で飲んでいる。
ちなみに、会社へは昨日辞表を出してきた。
お金がこれだけあれば、働く必要ないからね。
独身の女には少しこの家は広すぎるが、スタイリッシュな高級家具に囲まれるのは、やはり心地良い。
やはり一度の人生なんだから、こうでなくては。
・・・
二日前、私は一億円を手に入れた後、まずはコンビニに行き、うまい棒一本(たこやき味)を、一万円札で買った。
店員のバイト君は、ものすごく驚いた表情をしていた。うふふ。
私は得意になって、おつりをすべて、レジの脇にあった募金箱に入れて、颯爽とコンビニを立ち去った。
そして、その足で私は「ハニースイーツ」に行き、フルーツ・テンコモリ・パフェを五人分頼んだ。
もちろん、独り占めだ。
やはり乙女にとって、甘いものはいつまで経っても別腹なのだ。
私は、見事フルーツ・テンコモリ・パフェ五人分を食した。
「あ、おつりいらないです」
会計の時、私はレジの人に向かって一万円札を一枚渡すと、にこやかに言った。
「はいはい、一万円丁度お預かりしますね」
私は、何となく泣きたくなった。
・・・
ピンポーン
と、高級感溢れる呼び鈴の音がした。
「はーい」
私はグラスを置くと、玄関へ向かった。
「すみません、税務署の者ですが」
「はぁ」
税務署・・・?
私に何か用だろうか?
・・・あ。
私は今更になって、大変なことに気が付いた。
税金を払う余裕が、ない。
残りのお金が100万円ほどしか無いことに気が付いた。
あとは、建物の維持費とか、維持費とか。
そんなのもかかるだろう。
「すみません、今留守にしています」
「返事してるじゃないっすか。居留守使われても困ります」
「本当にないんです、いや、いないんですよ」
「税金が払えないならあなたの家を差し押さえますよ」
「いやいやいやいや」
私は、子豚の貯金箱を紳士に売り渡したことを後悔した。
でも、もう後の祭りだ。
さぁて。
仕事もお金もなくなってしまったから、今夜あたり夜逃げでもするか。
・・・
おわり。
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