13人が本棚に入れています
本棚に追加
ある男が、ひょんなことから死神から鎌を買った。
三万円、ちなみに一括現金払いで。
デカくてゴツい見た目に反して、割り箸のように軽いこの鎌は、振り下ろした相手の魂を吸いとるという。
「ご利用は計画的に」
と、決め台詞を残し、死神は三枚の万札をヒラヒラさせながら、カッカッカ、と高笑いを響かせて赤提灯の向こうへと去っていった。
鎌を手に入れて、意気揚々とした男。
しかし男は、なかなかの悪で、なんと、手に入れた鎌を金儲けに使おうと考えていたのです。
三万円を、三億円にしてやろう、と。
深夜。彼は、最寄りの銀行に忍び込んだ。分厚い扉や厳重な錠前は、どちらも死神の鎌であっさり切り捨てられた。
鎌の切れ味は、斬鉄剣もビックリなほどなのだ。
男は、金庫に入った三億円を見事せしめた。
まんまと三億円を手に入れた男はアパートに帰り、風呂を万札で一杯にして、勝利の湯につかりました。
風呂上がりのあと、盗んだ大量の万札で体を拭きましたが、まだまだ使いきれないくらい余っています。
そこで男は札束を枕にして眠りました。
翌朝、鎌の峰を使って部屋に散らばった大量の万札をかき集めたあと、そのうちの一枚をひっつかんで、近所のコンビニに行きました。
彼は、百円の肉まんを一つ買うのに、諭吉を一枚をドンと出しました。
店員は少し驚きました。
男は、鼻歌混じりの上機嫌でした。
しかし、一万円札を見る店員の眉間に皺がよりはじめ、いきなり大声で人を呼びつけたました。
男はあっという間に私服警備員に取り押さえられましたが、「なんでこうなるんだよ!無実だ!」と、わめきながら主張しました。
店員は、無言で男がさっき渡した万札を、男に見せました。
するとなんと、一万円札に描かれている福澤諭吉の肖像の顔が、死んでいるではありませんか。彼の目は、まるで死んだ魚みたいだったのでした。
男はその瞬間、気が付きました。あの鎌のせいだと・・・。
しかし、ことは既に後の祭り。
男はのちに銀行の防犯カメラの映像にも写っていることが判明し、しかるべき刑を受けましたとさ。
最初のコメントを投稿しよう!