「貯金箱」

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貯金箱。 お金を貯めるための箱。 凡例:「豚の ―」 ・・・ 一週間前のこと。 私は駅前にあった雑貨屋で貯金箱を買った。 500円のその代物は、ありきたりな、豚の形をした貯金箱だった。 可愛らしいからインテリアにでも、という軽い気持ちだったが・・・。 それが、とんでもないことになるなんて ― ・・・ 仕事帰り、私(OL/25歳未婚)が、駅前を歩いていると、ふいに道の脇に小さな雑貨屋さんがあることに気が付いた。 普段はあまり駅前あたりでは寄り道はしなかったが、ほんの好奇心から、中に入ってみることにした。 店の中は、こじんまりとした雰囲気がした。 愛想のよさそうな眼鏡をかけた初老の男性が、カウンターでわずかにこちらに微笑んでいる。 私は彼に会釈をして、品物を見て回た。 可愛らしい三毛猫のぬいぐるみ、銀製の天秤、ソフトボール並の大きな植物の種や、黒いシミのついた錆びた斧、果ては民族的男性用下着のコテカまで、あらゆるものが雑多に置いてあった。 ふとカウンターを見ると、そこには愛らしい豚の置物のようなものが鎮座していた。 よく見るとそれは貯金箱のようだった。 私がまじまじと豚の貯金箱を見ていると、愛想のいい店主のおじいさんが、「500円にまけといてあげるよ」と言ったので、私はそれを買って、アパートへ帰ることにした。 ・・・・・ 帰宅後。 私は豚の貯金箱を、本棚の上に奉った。 そして、試しに背中の穴へ、100円硬貨を入れてみることにした。 「チャリン」 と、心地のよい音がして、私は一人「うふふ」と、ほくそえんだ。 その時だった。 なんと、豚の貯金箱の体が、眩しい光を放ち出したのだ。 何事か、と思い、私はすぐさまフライパン(テフロン製)を掴んだ。 しかし、突然豚があまりに激しい光を炸裂させたために、私は思わず目を覆った。 「!!」
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