「貯金箱」

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近所のとあるコンビニの脇のATMに着いた。 私は意気揚々と貯金の全額の300万円を下ろし、全速で自宅に戻った。 道行く人々が、鼻息荒く走る私を訝るような目で見ていたが、そんな人々は、もうすぐセレブになる私を、羨望の目で見ることだろう。 オーッホホホッ! ・・・ 帰宅後。 見ると、子豚は用意したお札の大半を食べ残して、ブウブウと鼻を鳴らしながら歩き回っていた。 「あれ?どうしたのよ」 私が残ったお札の枚数を確認すると、それは90枚、つまり、子豚は10枚しか万札を食べていなかった。 私は、少し落胆した。 多分この結果から見ると、一度に食べられるお札の数は10枚まで、ということだろう。 試しに硬貨もやってみたが、やはり子豚は見向きもしなかった。 一気に大富豪になるのは、なかなか難しいようだ。 しかし、この子豚が生み出す100万円は、私のような薄給取りのOLには、有り余るほどの大金だ。 夢は大きすぎると、その重みで人は潰れてしまう。 私にとって100万円は、現実的で、なおかつ十二分な額ではないか。 未来の小セレブたるもの、堅実に生きようではないか。 100万円あれば、毎日フルーツ・テンコモリ・パフェが食べられるし、近所の吉●家で、躊躇わずに牛丼の特盛りが頼むことだってできる。 うふふふふ、私って計算が得意なのね。 私は子豚の頭を撫で、にやりと笑ったのだった。
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