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「やっ、柳先輩が、私なんかに喋ってくれるだけでもミラクルなのに……、そんな嬉しいこと言われたら……」
しゃくり上げるせいで続きが言えなくなり、みほはその場に座りこんだ。
「うぅー……」
「…………」
うめき声のようなすすり泣きを上げていると、柳が目の前にしゃがむ気配がした。
「みほちゃん」
「はい……」
「泣きやみなって」
「うー……」
「俺が泣かしたみたいじゃん」
「うっ、すみませ──」
「いや、いいんだけどね。みほちゃんの泣き顔かわいいし」
「え……?」
「みほちゃん」
「はい」
「ありがとう」
チュッ。
「…………へ?」
唖然としながら、柳の顔に視線を向けるみほ。
柳は、彼女の頬から唇を離し、吐息混じりの声で「これはお礼」と呟いた後、不敵に微笑んだ。
「柳ーっ!」
生徒会室のドアの前で声が聞こえ、陽気な雰囲気の副会長の田島(タジマ)が顔を出した。
てゆーか田島先輩はいたんだ……。
「おう、なんだ?」
「なんだ、結野もいたのか。いや、今度の予算案の話がちょっとゴタついててな」
田島はみほを一瞥してそう言うと、生徒会室に足を踏み入れた。
この場の微妙な雰囲気には、まったく気付かないらしい。
「また昆虫研究会のヤツらだろ、まったく……。いいよ、田島。俺が直接行く」
柳はそう言って田島の背中を押し、生徒会室のドアを開けた。
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