眼鏡王子とストーカー少女

10/11
前へ
/13ページ
次へ
  「やっ、柳先輩が、私なんかに喋ってくれるだけでもミラクルなのに……、そんな嬉しいこと言われたら……」 しゃくり上げるせいで続きが言えなくなり、みほはその場に座りこんだ。 「うぅー……」 「…………」 うめき声のようなすすり泣きを上げていると、柳が目の前にしゃがむ気配がした。 「みほちゃん」 「はい……」 「泣きやみなって」 「うー……」 「俺が泣かしたみたいじゃん」 「うっ、すみませ──」 「いや、いいんだけどね。みほちゃんの泣き顔かわいいし」 「え……?」 「みほちゃん」 「はい」 「ありがとう」 チュッ。 「…………へ?」 唖然としながら、柳の顔に視線を向けるみほ。 柳は、彼女の頬から唇を離し、吐息混じりの声で「これはお礼」と呟いた後、不敵に微笑んだ。 「柳ーっ!」 生徒会室のドアの前で声が聞こえ、陽気な雰囲気の副会長の田島(タジマ)が顔を出した。  てゆーか田島先輩はいたんだ……。 「おう、なんだ?」 「なんだ、結野もいたのか。いや、今度の予算案の話がちょっとゴタついててな」 田島はみほを一瞥してそう言うと、生徒会室に足を踏み入れた。 この場の微妙な雰囲気には、まったく気付かないらしい。 「また昆虫研究会のヤツらだろ、まったく……。いいよ、田島。俺が直接行く」 柳はそう言って田島の背中を押し、生徒会室のドアを開けた。  
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

259人が本棚に入れています
本棚に追加