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なんと彼女は、先日あった生徒会選挙に、見事当選した。
ポジションは書記。
「これでまんまと柳先輩の傍にいられる!」
瞳をキラキラさせ、一人で木に向かって身振り手振りをする様子は、だれが見ても不審者だ。
しかしそれだけ、彼女の柳を想う気持ちは、真剣で大きいのである。
「重い」とも言えるが。
「明日からの生徒会のお仕事、がんばっちゃお!」
意気揚々と、みほは握り拳を空に向かってかざした。
☆ ☆ ☆
「この資料をまとめておいて」
「はい!」
「このプリントは、各クラスへ配布する分。ちゃんとクラスごとに分けて、そろえておいてくれ」
「はい!」
「今度の集会の時に話す予算案について、先生から話を聞いておくように」
「はい!」
「結野さん。これ今度、市長との討論会で使う質問をまとめた表だから、きちんとした場所に置いといて」
「はい~~ッ!」
忙しい。
目が回るくらい、忙しい。
みほは言い渡された大量の仕事を一つずつこなしながら、今さら引くに引けない状況に後悔していた。
仕事を言い付けている柳本人は、それは涼しい顔で椅子に腰かけている。
柳先輩の傍にいられるのは嬉しいし、声までかけてもらえるし(仕事の話だけど)、名前も呼んでもらえるけど……。
忙しいー!
いつもみたいにうっとりと、先輩眺めてることもできないし……。
なんでかって?
目が合ったりしたら、恥ずかしくて、ドキドキで、赤面率200%だからだよ!
ちなみに、普通なら他の生徒会メンバーもこの生徒会室に集まっていなければならないのだが、あいにく今日は全員都合がつかず──。
室内には、みほと柳の二人きりだった。
緊張もマックスというものだ。
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