259人が本棚に入れています
本棚に追加
──というか。
ひょっとしていつものは、私が勝手につけたフィルター越しに柳先輩を見てたからそう見えただけで……、柳先輩にそういうつもりはなかった?
「…………っ」
そう気付いてしまえば、勝手に彼のイメージで騒いでいた今までの自分が、ひどく恥ずかしくなった。
「?」
柳が不思議な顔で、みほを見下ろしている。
みほは、頭にのせられたままの柳の手を、震えた自らの手で握ると、
「や、柳先輩、ごめんなさい……。私 勝手な妄想で、柳先輩のこと見てて……」
「ぶっ……! 妄想って──」
「でも、私! 柳先輩のことが好きなんです!」
「…………はい?」
「わ、私、ずっと柳先輩のこと見てました! 入学式の時からです! 壇上に上がって挨拶をする先輩が凛々しくてカッコよくて……ひっ、一目惚れでした!」
「…………」
柳は、“ぽかん”というのがぴったりな表情で、みほを見ている。
「だ、だからっ! 先輩がクールだろうとそうでなかろうと、どっちでもいいんです! ……いやいや、『どっちでもいい』ってのは失礼かな……」
混乱して、もう自分でも止められなくなっている。
頬を紅潮させ、体は震えて、柳の手を握る小さな手のひらには、汗が浮かんでいる。
「と、とりあえず、そういうことです!」
「…………どういうこと?」
柳のツッコミも、今のみほには届かない。
最初のコメントを投稿しよう!