眼鏡王子とストーカー少女

8/11
前へ
/13ページ
次へ
  彼女は言いたいことだけ言って、やっと落ち着いたらしい。 肩で息をするみほは、「やってしまった……」という目で、柳を見上げていた。 「ふっ、ふふ……」 「へ?」 「あははははは! ダメだみほちゃん、おもしれぇっ」 み、みほちゃん……。 柳に呼ばれた名前の甘さに、みほはヘラリと間抜けな笑みをこぼした。 「いや、感動したよ、みほちゃん」 「えっ、なんにですか?」 「君の言葉に」 「ええっ? どっ、どうして?」 「うーん、なんていうか……。俺が今まで持ってた悩みを、いとも簡単に投げ飛ばしてくれてさ」 「?」  柳先輩の悩み……? 「俺、いとこがいるんだけどさ」 「あ、知ってます」 それは、みほもよく知っていた。 2年生の、これまた神の産物のように美形な男の人。          ウツミヤ  ──確か名前は“写宮”さん。 同じく2年の、あんまり目立たない先輩と付き合ってるという噂がある。 「俺は昔から、アイツにコンプレックスがあってね」 「あの人に?」 「そう。アイツは天才だからさ、本物の。俺みたいに作り物の天才じゃないわけ。それがずっとコンプレックスだった」 “作り物”って……  
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

259人が本棚に入れています
本棚に追加