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彼女は言いたいことだけ言って、やっと落ち着いたらしい。
肩で息をするみほは、「やってしまった……」という目で、柳を見上げていた。
「ふっ、ふふ……」
「へ?」
「あははははは! ダメだみほちゃん、おもしれぇっ」
み、みほちゃん……。
柳に呼ばれた名前の甘さに、みほはヘラリと間抜けな笑みをこぼした。
「いや、感動したよ、みほちゃん」
「えっ、なんにですか?」
「君の言葉に」
「ええっ? どっ、どうして?」
「うーん、なんていうか……。俺が今まで持ってた悩みを、いとも簡単に投げ飛ばしてくれてさ」
「?」
柳先輩の悩み……?
「俺、いとこがいるんだけどさ」
「あ、知ってます」
それは、みほもよく知っていた。
2年生の、これまた神の産物のように美形な男の人。
ウツミヤ
──確か名前は“写宮”さん。
同じく2年の、あんまり目立たない先輩と付き合ってるという噂がある。
「俺は昔から、アイツにコンプレックスがあってね」
「あの人に?」
「そう。アイツは天才だからさ、本物の。俺みたいに作り物の天才じゃないわけ。それがずっとコンプレックスだった」
“作り物”って……
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