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ふわり。
少し、風が吹いた気がした。
「ばっ!こいつ、噛んでやんのーっ!」
「助けなんかこねーよ、ヒャハハハハ!」
万事休す。助けは来ない、その上恥まで晒してしまった。
傍目ならばとても燗に障るだろう、笑い声という名のノイズを生み出しながら、僕を取り囲む不良たちがゆっくり輪を詰めてくる。
「金は渡さないし、こんな展開でギャグまで見せようなんてなぁ?そーんな生意気なガキにゃあ、いいもんくれてやるぜ!」
「喜べ、とびっきりのパンチをくれてやるぜ!ヒャハ、ありがたく受け取りな!ヒャハハハハ!!」
拳、バキバキ。僕の身の危険を知らせる不快な音が妙に耳に入ってくる。
でも、もうダメだ。確実にやられる。体も気も小さく喧嘩の経験も全く無い僕は、このような展開において抗う術を持たない。ただただ防御に徹し、最小限のダメージで済むように耐えながら不良たちの気が収まるのを待つだけだ。
不良たちが気持ちの悪いニタニタ顔を浮かべつつ、その握り拳を振り上げた。僕は恐れつつも覚悟を決め、身を固める。
───そのとき。
「拓哉に手ぇ出したら、オイラが許さねーぞ!」
どこからか不思議な声が響き、
「な……何だぁ!?」
不良たちや僕を取り囲んで渦巻くように、強い風が辺りに吹き荒れ始めた。
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