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「お前らさぁ、よく見たら……ぷぷっ、みんな滑稽な顔してんなぁ!」
不敵な態度のまま、少年が笑った。肝が冷える。こんな状況で相手を挑発するような態度、僕にはとてもじゃないけどできない。
「な……何だとォォ!?」
「ばっ、バカにしやがって!!」
「クソ生意気なガキめ!!」
「やっちまえ!!」
案の定、血が上って顔を真っ赤にした不良たちが生意気な少年をリンチしようと襲い掛かり始めた。それぞれが固めた握り拳を振りかぶり、四方から攻めかける。
「あ……あ、危ないっ!」
少年の態度があまりにも不敵なので思わず呆けてしまっていたが、すぐに状況の危険さが頭になだれ込んできた。
僕は思わず叫びをあげる。その声は恐らく少年に届いたはずだ。
でも、目の前の危険が今まさに迫っていても、僕の悲鳴に似た叫びを聞いても、少年は一向に避ける気配すらない。
それどころか、何故か人差し指を突き出して、笑顔のまま不良たちに向けた。
「……っが!?」
「な、なんだっ……!?」
「体が……っ!?」
すると、驚いたことに不良たちの動きは急に止まった。
……否、信じがたい事だけど、止められたんだろう。明らかに片足を宙に浮かしたまま不自然な角度で静止している者もいる。
「汝、空舞うべし」
そんな様子を薄ら笑いで見ながら、少年は呟き、突き出した指をゆっくり上に上げた。
「え……!?」
すると。
目の前で顕れ始めた信じられない現象。思わず驚嘆が僕の口から漏れた。
なんと、まるで見えないワイヤーに吊るし上げられたかのように、不良たちの体がどんどん空中へと持ち上がっていく。でも仕掛けなんかないはずだし、そもそも仕掛けを作っている時間なんて無かったはずだ。
この少年……何者だろうか。
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