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一方、吊るし上げられた側の不良たちも、何が起こったのか理解できないでいるようだった。明らかに混乱を極めた表情で騒いでいる。
「わっ……わわわっ!?」
「な、なんだこりゃ!?」
「何しやがった!?降ろせぇぇっ!!」
だが、どれだけ不良たちが叫びながら空中でもがいても、少しも浮かぶ高さは変わらない。同じ場所でただジタバタとなるだけだ。
だが、不良の一人が言ったある言葉を聞いて、少年は少し反応を見せる。
「降ろして欲しいの?いいぞ~っ!」
楽しそうに言い、悪戯っぽく笑ったように見えた。
「汝、地砕くべし」
次に少年は呟きと共に勢いよく指を下げた。すると空中にいた不良たちの体が、指先の動いた軌跡を辿るように急降下し、そのまま地面へと激突した。
ゴッ!という痛々しく鈍い音が数回分折り重なって響いた。
「もう悪いことすんなよ~!」
滑稽なほどコメディックに地面へと叩き付けられた不良たちは、その衝撃ですっかりのびてしまっている。
そんな様子を、僕は声を出すことすら忘れて見とれていた。
理性は目の前で起こった理解不能な光景の意味を必死で理解しようと無駄な努力を続けていた。
───だが。
「す……すごい……!」
軽く手をはたき、ひと段落といった感じで息をついているこの少年。
彼はただ者ではない───僕の直感が狂いなくそう告げていた。
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