この店

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詩音は 手に持つ紙を折っていく。 そして、 完成したのか手を止めた。 女の子は目を丸くし、 出来上がった物を見て 口を開いた。 「鶴(つる)……?」 詩音は軽く頷き、 女の子に微笑みかけた。 「そう、 これはただの折り紙の鶴。 まぁ見ててよ!」 そう言うと 詩音は左の手の平に鶴を乗せ、 静かに 右手を覆いかぶせた。 そしてしばらくした後、 唐突に右手を外した。 中にあるのは 折り紙で折られた鶴ではなく、 生命(いのち)を持った小鳥であった。 小鳥は 小さくピィと鳴き声をあげ、 詩音を見上げた。 女の子は興味津々に その鳥を見つめる。 「……これは鳥さん?」 「うん。 この小鳥が 風船を取ってくれるんだよ。 さぁ、 行っておいで」 その言葉を合図に 小鳥はバサバサっと羽を鳴らし、空へと飛び立った。 .
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