この店

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「甘酸っぱい…… 青春の味ではないか」 声のする方を見ると、 店の入口の前で クロが丸くなっていた。 詩音は顔をしかめ、 ため息をついた。 「ただ 飴をもらっただけなんだけどなぁ……」 「なら 上の輩(やから)にも そう説明した方がよいぞ?」 そう言い、 クロは視線を上へ向ける。 詩音はクロの視線を追うように 上を見上げた。 「…なぁ……っ! ボスにハルさんまで……!」 閑が寝ていた部屋の窓から、 二人がニヤニヤとしながら 顔を覗かせていた。 詩音はクロをまたぎ、 店の中へ走って行った。 後ろから クロの抗議する声が聞こえたが 勿論無視した。 上の階へ着くと、 閑と晴香が含み笑いをしていた。 それを見た詩音は、 怒ったように 口を尖(とが)らせた。 .
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