この店

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「ほーら、 そんな若い内から 辛気臭い顔しないのっ!」 そう言いながら 晴香が詩音の背中を 凄い勢いで バンバンと叩く。 はっきり言って かなり痛い……。 涙目になる僕を ボスは 見てみぬふりしている。 なんて薄情な店主なのだろう。 「そろそろ仕事しなきゃだよ。 ほらほら、 二人共しっかり歩く! そうじゃないと引きずっちゃうよ?」 仕事したくても、 こんな店に 仕事を依頼する人間は少ない。 つまり、 一言で言うと暇。 そんなに急いで 下のフロアに行くだけ無駄。 ボスも それを知っているから 何も言わずに 煙草を吸い続けている。 煙草、 異常に短いけど 指は熱く無いのだろうか? そんな思考を 晴香の声が遮(さえぎ)った。 「二人共 動く気配が感じられないので 引きずりたいと思います」 薄く笑いながら 晴香はそう告げる。 そして次の瞬間、 閑と詩音は襟(えり)首を掴まれ、問答無用といった感じで 下の階まで引きずられて行った。 階段で引きずられると 体中あちこち痛くなるって 知ってた? これ、 僕の体験談。 ……どうでもいい話だけど。 .
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