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一階に着くと、
クロが呑気に丸まって
ひなたぼっこをしているのが
視界に
飛び込んで来た。
そして、
やはりと言うべきなのか
お客さんは誰一人として
来ていなかった。
「……っ
これから来るのよ、
きっと!」
ハルさん、
この状況で
よくそんな事言えるよね?
人通りは零(ゼロ)に近い
この通りに建つ、
こんなにもボロボロな
木造のお店……。
僕が客なら
絶対に立ち入らない。
この店がボロ屋なのには
どうしよもない理由が
存在するのだけど。
大きな原因の一つが
この店の成功報酬が
現金ではない事だろう。
お金のやり取りでないなら
何をを代わりに
受け取るのか――…。
ここの店は
等価のものと引き換えに
仕事を受ける。
小さいものには
小さいものを。
大きいものには
大きいものを。
ある人間の
消え逝く命を助ければ
それとは別の人間の
健全な命を奪う。
そうやって
プラスマイナスゼロにするのが
この店のルール。
まぁ命のやり取りなんて
滅多にしないけどね。
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