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こんな
くだくだした生活は毎日の事。
もう慣れてしまった。
退屈になった詩音は
窓の外を眺める。
目に映るのは
ハラハラと舞う桜。
そして
その木に引っ掛かる赤い風船と、ピンクのワンピースを着た
まだ幼い女の子。
騒がしくする店員を尻目に、
詩音は
軽やかな足取りで店を出る。
店を出て直ぐの場所に
その女の子は立ち尽(つ)くしていた。
「風船、
引っ掛かって取れなくなっちゃったの?」
僕の突然の呼び掛けに
女の子は一瞬肩をビクリとさせたが、
目を潤(うる)ませて
コクリと頷(うなず)いた。
「強い風が吹いて来た時、
思わず手を放しちゃったの……」
そう言って
困った表情で上を見上げる。
僕もつられて上を見る。
こういう時こそ
この店の出番なんだよね!
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