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橋本久志は美味しそうに牛丼を食べている。あたしの分もだ。
いらないって言ったのはあたしなのに、そんな風に食べられると困る。
そんな橋本久志があたしは多分好きだ。
あたしから見ればかなり無邪気で自然で、羨ましいとも言うのかもしれない。
丁度2時になった頃、田岡くんから電話が来た。
「ごめん、電話でるね」
「誰?」
「田岡くん」
「出れば?」
「あんたの許可とらなくても出るし」
あたしは橋本久志の顔をちらっと見てから携帯の通話ボタンを押した。
「もしもし?」
『もしもし?前田今どこ?』
「外にいるよ。どうしたの?」
『会って話したいんだけど?』
「そんなに経済学のノートわかりにくかった?」
『いや、そのことじゃなくて。どうしても今日会いたいんだ』
「放課後は?」
『5コマ終わるまでじゃなきゃだめなんだ』
「じゃあ今からは?駅前にいるし」
ずっと橋本久志の視線を感じていて、しかも不満そうな顔をしていることに気づいていた。
でもまさか携帯をとりあげられるとは。
急に手が伸びてきてかなり乱暴に携帯を奪われた。
「ちょっと、返してよ」
「明日美は俺とホテルにいるんだ。邪魔してんじゃねぇよ」
橋本久志はそう田岡くんに言い放ち、電話を切っただけではなく電源も切った。
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