掴まれる

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橋本久志は変なことを言っているけど、ふざけた様子はなく話を続ける。 「頼むよ。今日はちょっとまずいんだ」 「何がまずいの?」 「ごめん。今は言えない」 「いつになったら言えるの?」 「危機が去ったら。5コマは学校行けると思う」 「何それ」 あまりにも橋本久志が真剣に言うものだから、あたしは付き合ってあげることにした。 ちょっとからかわれている気もしたけど、それは一部分だけで、橋本久志は嘘を吐くようなやつじゃない。 もちろん5コマまで学校には行かないだけで橋本久志とデートする気はない。 あたしは「馬鹿みたい」と言い放ち、さっき来た道とは反対に進んだ。 「おい、信じてくれよ」 「はぁ?ていうか友達の家に行く予定だったの。最初から誰も学校行くなんて言ってないじゃん。あたしもう行くよ?」 「ちょっと待て。俺も行く」 「いや、空気読んでよ」 「あいつが来たらどうするんだ?」 「あいつって?」 「だから今は言えねぇんだよ」 また橋本久志はあたしの腕を掴み歩き出した。 一緒に来て良いなんて言ってない。そしてあたしに触れて良いなんて言ってない。何でこの男はこんなにも自分勝手なんだろう。
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