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「危機ってやつ、教えてやろうか?」
「うん」
乾いた服に着替えながら、橋本久志は弾んだ声でそう言った。
どうやら言いたくて仕方ないらしい。
「山崎が今日お前に告るって」
「山崎くんが?嘘だぁ?」
「朝お前ん家に迎えに行くって言ってた。あと斉藤も3コマ終わったらお前ん家行くって」
「あたしどんだけモテるのさ」
「本当に。だから焦ったんだ。俺は今日告るのは違うって思ったから、あいつらから逃げた。ごめんな?今日は」
「逃げないで告ってくれれば良かったのに」
「お前朝告ったらOKしてくれたか?山崎とか斉藤いなかったら多分俺らこんなふうになれなかったと思う」
「あのね、あたしもハナから逃げたよ。橋本久志どこにいる?って聞かれたけど嘘教えちゃった。ハナいなかったら雨に打たれることもなかったよ」
「withに感謝だな」
「うん」
ホテルを出て学校に向かった。
時間はギリギリなはずなのに、正門には知った顔がたくさんいた。山崎くんや斉藤くん、女子もたくさん。あたし達を見つけ、こっちに移動してくる。
「あいつらも次テストだろうが。走るぞ?」
「うん」
手を繋いで教室まで走り抜ける。もう笑うしかなかった。バカらしかったから。
そして幸せだったから。
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