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大学が開校した年の7月23日。前期を締めくくるテストの真っ只中だった。
外国語学部の英語学科1年の一組の男女は前置詞の勉強を朝から必死にしていた。
二人は両思いだったけど、付き合ってはいなかった。
男は夏休みに入る前に告白したいと考えていたらしいが、あまり勉強は出来なかったためにテスト勉強に追われていた。
どういう経緯かはわからないけど、二人は5コマのテストまでに関係を恋人に進展させた。
だけどそのせいで勉強に集中出来なかったからか、結局勉強の出来る女が必死に教えたのも虚しく、終わらなかった。
「あたし前置詞ではwithが好き。いっつもwith youでいて欲しいから。わからないところは全部withって埋めてね」
結局二人は仲良く大学院に進学し、一緒に留学して、今海外か国内かはわからないけど二人はどこかで幸せに暮らしているらしい。
色んなことに積極的に取り組み目立っていた彼らは何かと注目されていて、withというジンクスとして広まったらしい。
そんな何十年も前の話が残っているのは英語学科の教授のテスト問題が原因だ。
二人のこの一連の出来事を例文に使っているらしい。そして答えはwithが多いのだそうだ。もしかしたらその教授は、その時の…。
withのせいであたしの周りが騒がしかった7月23日だったけど、withのおかげであたしは誰よりも幸せになれた。
また今日も、隣には笑顔の久志。
自然に自分の隣にいるような、そんな人に出会えたから……。
――――end
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