掴まれる

5/9
前へ
/34ページ
次へ
あたしは近くの自動販売機に飲み物を買おうと立ち上がった。 「前田?どこ行くの?」 真剣に勉強してると思ったのに、やっぱりさっきの変な橋本久志のままだ。あたしに逃げられると何がそんなに困るんだろう。 「自販」 「俺が行く。何飲む?」 「え、自分で行くし」 「いいから」 「烏龍茶」 「笠原は?」 「あたしも烏龍茶」 橋本久志は「了解」と言って部屋を出て行った。橋本久志は甘い。sweetじゃなくてstupid。でもそんな甘さはもしかしたらsweetかもしれない。なんてったってあたしは逃げずにここにいるのだから。 「橋本くんと付き合ってるの?」 「まさか」 読みかけの少女漫画の第一巻を閉じ、本棚に戻した。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加