プロローグ

2/18
前へ
/106ページ
次へ
京浜東北線が石川町駅に到着する頃には、空はどんよりとした厚い雲に覆われ始めていた。 美沙紀は駅を出ると、今にも泣き出しそうな空を見上げて大きく溜息をついた。 そして、今度はがっくりと頭を下げ、まるで落とし物でも探すかの様にゆっくりと歩き始めた。 天気が崩れてきているとはいえ、元町方面に向かう大きな人の流れが途絶える様子はない。雨が降り出す前に商店街までたどり着きたいと考えているのか、みんなペースの遅い美沙紀を両脇から足早に抜き去っていく。
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1275人が本棚に入れています
本棚に追加