告白の夜

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今晩も同僚の尾毛羅と大衆酒場に行った。 『明日はフラワーCがあるなぁ』と尾毛羅がきりだした。 『うん、メンバーを見ると中穴から大穴になる可能性大だね』と京一は答えた。 『そうかなぁ、順当に堅く収まると思うけど…』尾毛羅は最近馬券が外れ続けて弱気になっていた。 『いや、よく見れば穴馬が1頭や2頭はいるものだよ』京一は表情ひとつ変えずに返した。 尾毛羅は怪訝な顔で彼の顔を覗きこんだ。 『⑨のカレイジャスミンが面白い存在だね』と京一は呟いた。 『前走は穴人気になって凡走したけど、休養明けで重目残りだったからな』 『でも、着差はそんなに悪くないし、使われてから気配が一変したみたいだから今度こそコワいぞ』 京一は競馬解説者みたいに一人でしゃべった。 『そうかぁ。じゃあそこから相手を絞って3連単で買おうかなぁ』 尾毛羅はすぐ他人の予想に感化されるタイプで、もうすっかりその気になってしまった。 『これで資金を増やして阪神大賞典にぶち込むぞ』 尾毛羅は気が早く、日曜日の重賞のことまで先走っている。
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