山道

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車が進み家並みが消えた。どうやら町はL字型の一本道であまり大きくはないようだ。道はどんどんと開け久しぶりに空を見ることが出来る。月は出ているが空はまだ微かに明るく感じられ、むしろ時間が少しだけ戻った気さえした。きっと先程まで車のライトだけを頼りに来たからだろう、森の暗さに慣れてしまったのだ。 「月って思ったよりも明るいんだな。」 「あっ!いたいた!さっきの松明!二つに増えてる!?」 月を眺めていた俺は拓の声で視線を前へと落とした。もう少しで松明の光に追い付きそうだ。 道は緩やかに左に曲がり、突然それは現れた。
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