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「ここ廃墟なのかや?こういうの初めて見たやー。ドア開きっぱだし窓ガラス割れてるし、でも歌聞こえるから人はいるんだろうしなー?」
周りが暗い雰囲気に飲まれ、会話が少なくなるのが嫌だった。俺はその場を明るくしようと口を開くが気の効いたセリフは出てこない。返ってくるレスポンスはなにもなかった。
古びた家並み、木々に囲まれたこの町はきっと朝になっても薄暗く、光が射し込む想像が難しい。耳を済ませば微かながら水が流れる音が聞こえる。川が近いのだろう。
「あっ、またあの光だ!!」
先ほど見て追ってきた松明のような光、いや、多分あれは松明なのだろう。松明はゆっくりと少しづつ遠ざかり方向を変えて左に進みまた視界から消えた。
「拓ちゃん人だよ!早く追ってみよう!!」
安達くんは一刻も早く人に会って気持ちを落ち着けたいようだ。こういう安達くんを見たのは初めてだ。
拓は車のアクセルを踏みスピードを少しだけあげる。気のせいか先程よりも歌がハッキリと聞こえる。歌っている場所が近くなったのか?
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