秋。

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先生は相変わらずよくしゃべった。先生の声が心地よくて、バス停に着かなければいいのにと思う。 もっと先生のことが知りたい。 一緒にいたい。 そう思ううちに、 「先生は、彼氏とか居んの」 ぽろっと、口にしてしまった。あわてて顔を背けて『なんとなく聞いただけ』といいわけがましく付け加える。 そっと先生のほうを見ると、先生は 「残念ながら、いないんだよね」 と明るく笑っていた。 その言葉にほっとしている自分に気付いて、ふっとため息をつく。俺らしくない。 こんな俺のように、先生に惹かれている生徒は他にもいるだろう。中にはストレートに告白するやつもいるかもしれない。そう思うと、なんだかおもしろくない。 ふと先生を見ると、一瞬。本当に一瞬だけ、悲しそうな顔をした気がした。 思わず「先生?」と声をかけると、先生はいつもどおりの顔で「ん?何?」 と返してきた。 それとほぼ同時に先生の乗るバスが到着して、「あっ乗らなきゃ。じゃあね」 とさっさと帰ってしまった。気のせいだったんだろうか。 俺は自覚してしまった自分の気持ちに気をとられて、そのことはすぐに忘れてしまった。 先生に、恋なんて。 無茶だよなぁとため息をついた。 風が冷たくなり始めた、高三の秋のことだった。
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